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CSAで農業ビジネスが成立!
みんなの「なないろ畑」農場

神奈川県大和市 農業生産法人・なないろ畑株式会社 代表 片柳義春さん

片柳さん。

片柳さん。

「ボランティアをすると、堆肥づくり、作付け、農作業も学べます。野菜の出荷場に集まった人と、調理方法を情報交換できるのも楽しみ」
なないろ畑株式会社のボランティア歴7年の女性が話してくれた。
なないろ畑の野菜の出荷場は、都市近郊の駅から徒歩10分のところにある。出荷日である火曜日、木曜日、土曜日に、なないろ畑の支援者であるボランティアが集まってくる。
ボランティアは、畑から収穫された野菜を、Sパック(2人分・月6千200円)、Mパック(4人分・月8千800円)にセットし、イモなどは保冷庫に入れていく。
セットされた野菜は、なないろ畑の会員が、週に一度、出荷場まで取りに来る。取りに来れない会員には、宅配される。

農業者、消費者にメリットがあるCSA制度

なないろ畑のようなシステムは、CSAと呼ばれている。CSAとは、Community Supported Agricultureの略で、「地域が支援する農業」と訳される。地域の消費者が、地域の特定農家から、直接、定期購入する仕組みだ。
消費者は、生産現場を見ることができ、自分の目で食の「安全・安心」を確認できる。農場にも遊びにいけるので、子どものいる家庭にとって、食の成り立ち、食の大切さを教えることができる。一方、生産者は、収穫物をすべてパックするので廃棄するものがなく、農家を支援する固定の消費者がいるので、収入が安定するというメリットがある。

なないろ畑がCSA農場となった経緯

なないろ畑株式会社の代表を務める片柳義春さん(54歳)は、2003年4月に46歳で新規就農した。有機農業で就業して、当初、生産した有機野菜を自然食品店4店舗に卸していた。しかし、価格が安いうえ、労働力の確保が難しく、販路の拡大にも悪戦苦闘していた。その解決策として、地域通貨を8年に渡り導入したが、課題は多く、中止した。しかし、地域通貨が現在のなないろ畑となるきっかけになり、現在のなないろ畑の問題点を払しょくできるのではないかと今でも地域通貨に再チャレンジする準備をしている。
ちょうどこの頃、一部の生協やスーパーで食品偽装が発生したことにより、消費者は本当に安全・安心な食を求めて、なないろ畑を訪ねてきた。消費者と情報交換をしていくなかで、片柳さんが一言。
「自然食品店への出荷で忙しいから、野菜が欲しいなら、自身で収穫して。料金は、自己申告制!」
この何気ない消費者への提案が、畑に人を呼び寄せた。畑に来る人が増えたことにより、事務が煩雑となり、05年から会員制で野菜のセット販売に切り替えた(会員数約40世帯)。こうして、自然とCSA農場となっていた。
「消費者のニーズに応えて、経営を成り立たせようとしたら、CSAになっていたんです」
労働力については、会員のなかの有志がボランティアとなり、農作業のほか、出荷作業、農産物の保存、経理、会員名簿の管理なども行うようになった。
2010年には、経営を法人化し、現在は、会員が約80世帯に増えた。会員への販売のほかに、ファーマーズマーケット(直売所)を2店舗運営している。年商は1千万円。農地は、出荷場の近くに14か所あり、合計2ヘクタールとなる。会員100世帯まで対応できる規模だ。作目は、会員の需要に応えるため、ゴボウ、イモ、タマネギ、ズッキーニなど約50品に及ぶ。

親分・片柳さん

ボランティアには、片柳さんを「親分」と呼ぶ人もいる。なないろ畑に人を呼び寄せたのは、親分である片柳さんの人柄がある。
片柳さんは、大学生の時から宮沢賢治の仏教、アメリカのヒッピーやコミューンに関心を持ち、反原発運動、高層マンション反対運動などの市民運動をしてきた。これらの思想のもと、実際に有機農業を始めた。持ち前のパワーや知識で、堆肥作り、栽培技術の研究には余念がない。
なないろ畑が成長できた理由について、片柳さんは、①消費地の真ん中にある都市農業である、②安全な野菜、おいしい野菜の提供ができる、③収穫の楽しみを消費者が味わえることなどをあげている。
CSAは、誰もが導入できるわけではない。現に、日本で行っている農家は少ない。片柳さんは、なないろ畑をみんなの農場にして、消費者と「おしゃべり」をしながら、方針を決めていく。消費者はそのことを地域に発信していく。このことで、なないろ畑の会員が増える。
CSA農場を目指したのではなく、農家と消費者で一つずつ作り上げていったことが成功の秘訣かもしれない。

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