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前職で縁のあった長野県へ移住
研修会等に参加し入念に準備

長野県松本市 水越 哲也さん
(37歳)林業歴:1年2カ月

水越 哲也【みずこし てつや】
 埼玉県草加市出身。前職は国家公務員だったが、成果を実感できる仕事がしたいと林業へ転職。オガサワラ林業㈲に所属し、現在は「緑の雇用」の研修生として刈払・伐採の作業に勤しむ日々を送る。

デスクワークに物足りなさ
今が最後だと転職を決意

 「森や木が嫌いな人がいるとは聞いたことがありませんが、その割に林業や木材を身近に感じている人は少ないなと思ったんです」と話す水越哲也さんは、昨年の4月に長野県松本市のオガサワラ林業㈲へ転職した。前職は国家公務員でインフラ整備に関わる仕事をしていた。しかし、デスクワークが中心であったため、自分の仕事の成果が目に見える形で実感できないことにいつしか物足りなさを感じるようになっていた。30代半ばに差し掛かった頃、「新しい仕事に就きたいなら、きっと今が最後のチャンスだ!」と考え、転職へ向けて動き出す。

 なぜ林業に興味を持ったのか?きっかけは第一次産業について調べた時、林業従事者が少なかった事だという。「こんなに生活の一部として木があるのになぜ林業従事者は少ないのだろうか?」と疑問を抱いた水越さん。林業について調べてみると、初心者へ向けた研修制度が充実していたり、50歳からでも挑戦していたりする人がいることなどを知り、体力に自信のあった水越さんは次第に「自分でも林業に挑戦できるのでは?」と林業への興味を高めていったそうだ。

 転職活動にはおよそ2年をかけ、しっかりと準備をした。まずはインターネットやSNSを活用して情報収集から開始し、東京国際フォーラムで「森林の仕事ガイダンス」が開催されると知ると早速足を運んだ。その後も山梨県や群馬県での1日林業体験に参加し、作業風景を見学。初めて見るチェーンソーを使った伐倒の迫力には圧倒されたという。さらにはJOIN((一社)移住・交流推進機構)が主催したイベントで、地域おこし協力隊の体験談を聞いたりと、移住・林業に心惹かれる気持ちは日々強くなっていった。

 だが肝心の移住先については、前職での転勤で住んだことのある長野県か群馬県のうち、どちらにしようか決めかねていた。そんな矢先に参加した長野県塩尻市での林業研修見学会で、現職の人からじっくりと話を聞く機会を得ることができた。
この時の体験で長野県に対する印象が良かったことから、今度は同県小海町で1週間に渡る林業インターンシップに参加。1週間本格的に就業体験をしたおかげで、森林組合や林業がどういうものなのか感覚をつかむことができたそうだ。

「緑の雇用」研修生へ
林業に従事する日々

 熟考の末、移住先を長野県に決めた水越さん。さっそく(一財)長野県林業労働財団が主催した共同就職説明会を訪れ、そこで知ったのがオガサワラ林業だった。福利厚生等もしっかりしており、自分と同世代の林業者や移住者が多いことにも安心感が持てたという。

 現在は「緑の雇用」の研修生として、主に刈払・伐採の作業に従事している。「『緑の雇用』がなかったら林業に転職していませんでしたね(笑)。刃物の扱い方や危険性などを一から教えてくれるので、林業の知識のない初心者にとって非常にありがたい制度です。実は転職先をオガサワラ林業にした理由の一つが『緑の雇用』の実施経営体だったからなんですよ」。

 転職して最初の数か月間は仕事の進め方が分からず戸惑うこともあった。しかし最近では、木々を伐採した後に見通しの良くなった山間を眺め、満足感に浸ることもあるという。「前職では共同作業といっても形だけのものでしたが、ここではロープを引っ張り伐倒する作業のように、皆で一緒に行わなければならない場面も多いので、本当の意味での“共同作業”ができることも大きな魅力ですね」と楽しそうに話す水越さん。今後の目標は心から楽しんで仕事ができるようになることで、ゆくゆくは現場をまとめる、仕切る立場になりたいと語る。


成果がひと目で分かる林業に大きなやりがいを感じている水越さん。「どうして国家公務員から林業へ転職したの?」と聞かれることがあるが、今の選択をしたことを全く後悔していないという。