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手に職をつけて働く姿に憧れ
若くして林業への挑戦を決断

鳥取県鳥取市 守本 沙織さん
(32 歳) 林業歴:3年

【もりもと さおり】兵庫県養父市出身。海運関係の会社で事務職として数年間勤務した後、鳥取県へ移住し林業に転職。現在は鳥取市内でアパート暮らしをしながら、所属する鳥取県東部森林組合で日々林業に勤しんでいる。

海から山へ、事務職から林業へ

「日本にも木がたくさん生えているのに、なんでわざわざ輸入しているんだろう?」毎月丸太を積んだ船が寄港する姿を見る度に、守本沙織さんはいつもそんな疑問を抱いていた。
兵庫県出身の守本さんの前職は、海運関係の事務職だった。外国人船員たちの派遣を斡旋していたこの会社にいた頃、試験を受けてキャリアアップをしながら世界中を飛び回る船員たちを日々見守るうち、いつしか「自分も好きなことで手に職をつけたい」「できれば自然と関わる仕事へ転職したい」と望むようになっていた。
そんなある時、たまたまラジオ番組で林業へ就業した20代男性のインタビューを聴く機会があり、林業という仕事へ興味を抱いた。ほどなくして電車の中吊り広告で「森林の仕事ガイダンス大阪」というイベントが開催されることを知り、軽い気持ちで足を運んでみたところ、鳥取県のブースの人たちが気さくにいろいろと教えてくれた。
他のブースでは「林業はキツイ仕事だから、女性にはしんどいんじゃない?」と言われたが、鳥取県の林業従事者には女性もいるらしい。「女性にもできる仕事なのだ」と思った守本さんは、勧められるまま鳥取県林業担い手育成財団が主催する「林業体験」へ参加。その後「林業就業支援講習」を受講し、現在所属する鳥取県東部森林組合に入社した。ちなみに入社当初は、作業用の服や道具を一式そろえようとするとお金がかなりかかるが、国の『緑の雇用制度』や県からの購入補助により、防護服、ヘルメットやチェーンソーなどの高額な道具は数年間借りることができたりしたので大いに助かったそうだ。
事前に体験や講習を受けていたため、林業の1年の仕事の流れや内容は入社前からおおむね知っていたが、初めてチェーンソーを握った時はやはり怖いと思ったという。3年目に入ったいまでは、チェーンソーを上手く扱えるようになってきているが、男性に比べ腕力が足りないため思うように体が使えなかったり、植込み作業の際にたくさん数をこなせなかったりと、時折自分の未熟なところを歯がゆく感じることがあり、班長からは「焦って作業してはいけない。まずは安全確実に仕事をしなさい」と諭されることもある。始める前は危険なイメージが強かった林業だが、実際は非常に安全意識の高い現場だったので、その点は好感を持ったと守本さんは語る。

仕事を覚えるため悪戦苦闘する日々だが、その一方で春に新芽が生えているとうれしい気持ちになったり、夏に下刈りをする際に成長している木々を見るとホッとしたりするなど、林業に従事する者ならでは
の喜びも感じている。また前職では度々腰痛に悩まされていたが、いまの仕事を始めてからは痛むこともなくなったという。誘惑の多かった都会暮らしをしていた頃に比べ散財もしなくなり、睡眠と食事も充分にとっているので健康的な生活もできているそうだ。
「林業は体力勝負の仕事なので、誰にでもに勧めることはできません」。これが守本さんの率直な意見だ。だが、男女に限らず山へ興味を持ってくれる人が増えることはうれしいので、興味があるならば自分に合ったやり方で関わってほしいとも彼女はいう。コロナ禍で世の中全体の在り方が大きく変わっているいま、これからの自分の生き方について立ち止まって考え直している人も多いことだろう。そういう人は一度山へ視点を転じてみてはいかがだろうか?