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農林漁業就業・ふるさと情報  Produced by NCA 全国農業会議所

子どもの頃から好きだった魚
その魚が身近にある生活

神奈川県大磯町 山崎 哲也さん
漁業歴:8年

【やまざき てつや】東京都町田市出身。海のない環境で育ちながらも、幼少期から魚を中心に生物が好きで、「魚に携わっていきたい」との思いから大学では水産学を学ぶ。卒業後は海から離れるものの、魚への気持ちが褪せることがなく、職業体験を経て漁師の道を歩み出した。10月には第一子となる女児が産まれ、私生活でも充実した日々を送っている。

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年を取ってから後悔したくない
部門責任者から一転

神奈川県の南西に位置する小田原漁港は、相模湾を望み西に箱根、南には熱海と湯河原があり、相模湾を中心とした好漁場に恵まれる。都心へのアクセスの良さなどから県西地区水産物の流通拠点として栄えてきた歴史をもつ。そんな小田原漁港に水揚げをしている(有)二宮漁場で働いている山崎哲也さんは、平成20年9月に職業体験を経て、翌年の平成21年2月から中郡(大磯・二宮)地域に移住し、漁師として活躍している。
魚が好きで、もっと魚を学びたい、研究したいという気持ちから大学では水産学を専攻。2年次からは岩手県大船渡市にあるキャンパス(現在は研修・研究施設としてのみ利用)で学ぶこととなり、内陸育ちであった山崎さんにとって一気に海が近い生活環境へと変化。そこで初めて漁業に触れることになる。
「大学の先輩から地元漁師の漁を手伝えば魚を分けてもらえるという話を聞き、何回か定置網漁を手伝ったことがあります。ですが、寒いし手は痛いしで、これは仕事としてやるべきじゃないと思っていましたね」と当時の心境を振り返る。

鮮魚類の取り扱り

年間約8千トンの鮮魚類の取り扱りがある。

大学卒業後は実家へ戻り、一度はホームセンターに就職し、部門責任者となったが、働いて行く中で「魚に関する仕事がしたい」という気持ちが高まり、魚に携わる仕事を探し始める。探していく中で〝魚に一番近い職業”である漁師に再び魅力を感じ始め、学生時代に仕事としては考えられなかった漁師の道を模索することとなった。
漁業就業について調べていく中、インターネットで(有)二宮漁場の求人情報を発見する。資料請求をしたところ、徳江社長から直接電話があり、「興味があるなら一度話を聞きにおいで。漁業は経験してみないことには分からない部分があるから、まず一度船に乗ってみな」との誘いがあり職業体験として漁に同行する運びとなった。
職業体験では学生時代に定置網漁を経験していたことが幸いし、大きな苦労や困難などといった懸念材料はなく、より一層漁業の現場で働きたい意志が固まった。前職の都合もあり2カ月ほど同社に連絡できず、「これはちょっとダメかな」と不安になったが、連絡してみると「漁師になりたい気持ちがあるなら、少し遅くなっても構わないから待っているよ」という話をもらい、そこまで言ってもらえるならば迷う必要もないと決心。その後、2回目の職業体験を経て、漁師へ就業に至ったのである。

小田原港

小田原港の競りは6時からスタートするので、開始時間に向けて魚の陸揚げや選別などの作業を行っていく。捕ってきた魚は基本的にはその日の競りで売れてしまう。

自分で捕った魚を売る仕事に高いやりがいを感じる

漁師となって8年が経った山崎さん。漁師生活について「好きな魚に触れられるので、仕事に対する充実感は高いです」と笑顔で語る。特に自分が処理した魚に高値が付いたり、安値であったとしても魚屋に「この前の魚、卸した寿司屋で評判が良かったよ」などと声をかけてもらうと「やって良かったな」と充足感が得られるという。自分で捕った物を売ることでホームセンター勤務時代には得られなかった“やりがいと喜び”に浸れるという。

血抜き処理

船上で捕った魚の血抜き処理なども行う。

漁師の仕事は独立型と雇用型があり、山崎さんは(有)二宮漁場に所属する雇用型となる。雇用型は会社員なので、福利厚生制度があり、給料制となる。親族や知人に漁師がいるなら色々な知識やサポートが得られるが、漁師について何も分からない状態で飛び込むというのは不安だ。漁業を全く知らない人には雇用型を勧めたいと山崎さんは言う。
「これから漁師を志している人は、まず漁業という仕事を体験してみることだと思います。もしダメだと感じたら他の職種へ方向転換しても良いのですから」。

競り

競りが始まると市場は一層慌ただしくなる。

今回取材した山崎さんの様に、通常の漁に同行して職業体験をするという取組みは多くの漁場が行っているという。求人を出している漁業者に問い合わせてみて確認してみるといいだろう。いきなり通常の漁に同行するのはちょっとハードルが高いと思う人は、全国の漁業組合や自治体などで体験・研修プログラムを用意して体験者を募集しているので、自分に合った職業体験を利用するのが漁業就業への道となるのは間違いない。

徳江好春さん

インタビュー