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自立した子を育む自然の教育力を信じて
「森のようちえん」を開設

鳥取県智頭町 NPO法人・智頭町森のようちえん まるたんぼう 代表 西村早栄子さん

人生経験から自然と開けた道

「まるたんぼう」の保育方針には、4つの禁句と3つの心得がある。4つの禁句とは「危ない、汚い、ダメ、早く」。そして3つの心得は「お口にチャック、手は後ろ、耳はダンボに」。その方針を貫くと、現場ではたとえばこうなる。
好き放題に道草をくうので、列は長ーく伸びる。おしっこを漏らした子が、動じることもなくリュックからパンツを出してひとりでお着替え。ケンカして泣いた子に、年上の子が寄り添ってなだめている。ミミズや虫をいじりまわした手でお握りをつかみ、ほおばる。
子どもたちは筋力も抗菌力もバッチリだ。何より、大人の顔色をうかがう子がいない。自由奔放というより、“自立している”という表現がぴったりする。
「発端は自分の子の保育。“与えすぎ・守りすぎ”の日本の保育環境ではうちの子はダメになるという危機感がありました。森や林業を何とかしたいなんて、だいそれた考えはないですよー」と、西村早栄子さん(39歳)はにこやかに語る。しかし、振り返ってみると「智頭町での森のようちえん」に、自分の人生のすべてがつながっていたようにも思うという。

入園時のプレゼントは熊鈴とホイッスル。どちらも自分の居場所を知らせるアイテム。つまり「迷子」になれるほど行動は自由なのだ。

入園時のプレゼントは熊鈴とホイッスル。どちらも自分の居場所を知らせるアイテム。つまり「迷子」になれるほど行動は自由なのだ。

早栄子さんは、東京都町田市の新興住宅地で、遊び場の山が削られ宅地造成されるのを見ながら育った。地球の環境問題がいわれ始めた時代。「砂漠の緑化とか、自然のために働く仕事をしたい」と思うようになり、東京農業大学の林学科に進んだ。
意外なことに、大学時代のサークルはダイビング部。「地球の7割は海。森だけではなく海の世界も知らないとバランスが悪いと考えたんです」
研究テーマのほうは、砂漠の緑化から塩に強いマングローブへと興味が移り、修士課程は琉球大学、博士課程は京都大学へ進み、ミャンマーでフィールド研究もした。貧しく不衛生でも元気いっぱいの子どもたちと出会ったのはその折。「こんな環境で子どもはたくましく立派に育つんだ。日本はおかしいのかも」と、目を開かされる思いだったという。
28歳で同じく林学を学ぶ昌教さん(36歳)と学生結婚し、長男を出産。間もなく昌教さんが鳥取で県職に就いたのを機に、鳥取市内の昌教さんの実家に同居することになった。さらにその翌年、鳥取県で林業技師の募集があったのに応じ、早栄子さんも県の職員に。そこで智頭町との係わりが生まれる。
「最初の赴任先が、智頭町も管轄する八頭総合事務所農林局でした。夫もそうなんですが、研修で智頭町に1週間住みこむ“プチ智頭体験”をして、智頭っていいね、子育てするなら智頭みたいな田舎がいいね、自分たちの山も持ちたいねと、どんどん夢が広がって…。運よく直属の上司が智頭のひとで、そのご紹介で古民家を借りられ移住しました」

西村さん一家が借りている古民家。

西村さん一家が借りている古民家。

ちょうど6年前、2人目の出産を間近にひかえた、2006年5月のことだった。
西村さん一家が借りている古民家。  智頭町は、江戸時代には岡山と鳥取を結ぶ交通の要衝、宿場町としてにぎわった。明治以降は林業で栄え、とくに良質な杉の産地として名をはせてきた。全国的に林業不振の現在でも、木材市場はじめ木材関係の産業が維持されているほか、森林セラピーの事業にも力を入れ、森を資源とした町づくりが行われている。
「移住して2年目に、町の人材育成塾に参加したのが大きな転機になりました。わたしには温めてきた夢がありましたので」。その夢こそ、長男の子育て中に読んだ『デンマークの子育て・人育ち』(澤渡夏代ブラント著)に紹介されていた、森のようちえんだ。
「それまでの経験から考えてきたこと、長男の子育て、森に係わる仕事をしていること、あらゆることがつながって、これがしたい!いつかしたい!と、思っていたんです」

森を守る力になると信じ
さっそく人材育成塾で森のようちえんの提案をしてみると、「いいねー」と賛同する仲間たちが集まってきた。そこで月に1回「お散歩会」を開き、仲間や自分の子どもをいわば“実験台”に、森での保育のイメージを積み上げていくことにした。
「これといった障害もなくトントン拍子だったんですよ。お散歩会は予想以上の反響で、回を重ねるごとに口コミで参加者が増えました。具体的な『森のようちえんを作る会』に発展したところに、タイミングよく新しい町づくり政策で予算がおりることになったんです。提案からわずか2年です。夢って思い続けているとかなうんですねー」
夢の実現に大きな力となったのが、ご近所のママ友であり当初からの仲間、熊谷京子さん(38歳)だ。現在中学1年から小2までの3人の男の子のお母さん。常勤スタッフとして毎日子どもたちを森に引率する、現場の司令塔でもある。
「京ちゃんの子育てセンスが『まるたんぼう』の保育方針の基礎になっています。わたしは仕事もあったので事務局の担当。彼女がいたからこその実現です」と、早栄子さん。4年前、すでに日本にも森のようちえんはいくつも生まれていたが、あえて視察などはしなかったという。自分たちの感覚や、経験から学ぶことを大事にしたかったからだ。
「2年前、本場ドイツに視察に行きましたが、保育士が手も口も出さないところが『あっ、うちと同じだ』と実感できました。自己流でしたが、わたしたちは森のようちえんの真髄をうまくつかめたのでは、と思っています」

今、園児36人のうち4分の3が町外から通ってきている。中には「まるたんぼう」に入るため他県から智頭に移住した家族もいる。ここまで本格化したこともあり、早栄子さんは今年3月に県職を辞して、森のようちえんに専念することにした。次の夢は「森の小学校」を作ること。幼児期だけではもったいないほど、森の教育力は限りなく豊かだ。
「森で育った子どもは、大きくなったら必ずまた森に帰ってくると思うんです。直接森に係わる仕事をしなくても、少なくとも森を壊そうとする人間にはならないはず。そう信じて、今は人作りの仕事をせいいっぱいやりたいと思っています」

フィールドの森は全部で14 か所。気象の注意報・警報が出ていないかぎり森ですごす。

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